舟を編む 三浦しをん 辞書作りの話

2019年3月5日火曜日

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舟を編む あらすじ

出版社・玄武書房では中型国語辞典『大渡海』の刊行計画を進めていた。営業部員の馬締光也は、定年を間近に控えて後継者を探していた辞書編集部のベテラン編集者・荒木に引き抜かれ、辞書編集部に異動することになる。社内で「金食い虫」と呼ばれる辞書編集部であったが、馬締は言葉への強い執着心と持ち前の粘り強さを生かして、辞書編集者として才能を発揮してゆく 
三浦しをん氏の小説は、直木賞を受賞した「まほろ駅前多田便利軒」と同シリーズ「まほろ駅前番外地」と「まほろ駅前狂騒曲」をよんだことがある。

正直もう内容はうろ覚えだが、心温まる話だったという印象があります。

そしてそれは本作でも同様でした。

金がない辞書編集部

冒頭で、定年を理由に辞書編集部を辞さねばならない荒木を、荒木とタッグを組んで長年辞書編集をつくり監修していた国語学者である松本朋佑が寂しそうに見送る場面が描写されます。

荒木は自分には辞書を創るだけの才覚がなかったと述回しつつ、目の前にいる松本朋佑という優れた辞書作成の能力を持つ人物と一緒につくっていた新しい辞書『大渡海』の完成のために、自分の後継になり得る人物を探します。

そこで登場するのが、本作の主人公である馬締光也です。馬締……これはマジメとよびます。最初に顔も名前も知らない荒木は、「まじめさーん」という呼び声に、出版社というマジメ人間の巣窟において真面目と評されるとはどれだけ真面目なんだろうと、驚愕と同時にどこか嫌な予感を覚えているのが笑えます。

まあ、その予感はあたらずとも遠からずなのですが。

衣服の身だしなみだったり、コミュニケーション能力の著しい欠如……というか独特過ぎる感性によるただの偏見から孤立しているだけにも見えるが、とにかく普通とは一線を画した人間性を持つ主人公、馬締光也。

しかし一線を画しているのは人格だけではありませんでした。辞書編集に生まれてきたかのような
言語感覚の鋭敏さは、荒木に自分の後継に申し分ない逸材だと感じさせ、国語学者である松本朋佑もその能力の高さに感心します。

昔の部署である営業では足手まといもいいとこだった馬締が、ここで自分の能力を花開かせていく様は読んでいて気持ちがいいです。

馬締光也と西岡正也のちぐはぐコンビ

辞書編集部には、先に配属されていた同年代27歳の西岡正也という人物がいるのですが、これが主人公の馬締光也とは似ても似つかない人物です。

馬締光也の真面目さとは対をなすほどにちゃらんぽらんな西岡正也。最初はなんだこいつは!?と思っていたのですが、ちゃらんぽらんなところは人を和ませ楽しませるための処世術でもあり、高いコミュニケーション能力による取引先との交渉には極めて高い能力を発揮します。

とても好対照な二人という人物だなあと、本作を読んでて思うようになりました。

また、馬締光也もその西岡正也の内面には気づいており、相手が傷つくようなことは決して言わないことに気づいており、西岡に憧れに近い感情も抱いているのが、すごくいいですね。

馬締光也の恋模様 意中の相手は板前見習いの林香具矢(はやし かぐや)。美人。

馬締光也の下宿先へ、突如、謎の美女が住み着きます。それは下宿先の管理人のおばあちゃんのお孫さんでした。それが板前見習の林香具矢。その人目を惹く端麗な容姿に、馬締光也は瞬く間に恋に落ちます。

しかし、馬締は生まれてこの方、異性と付き合った経験がありません。

紆余曲折あり、なんと思いを伝えるためにラブレターを書くのです。今時ラブレターで思いを伝える人はいったいどれほどいるのか。

しかも、ラブレターの出来栄えを評価してもらおうと、このラブレターを西岡正也の仕事机の上に置くんです!

いやマジか、マジメ(馬締)!

人にラブレターの添削をお願いするってマジか!?

このくだりを読んだときは大爆笑してしまいました。後日、そのラブレターを読んだ西岡は、馬締に生暖かい視線で「うん、いいんじゃない」と馬締という人物を完全に理解しているので、冷静に対処しているのも笑えました。

でも、西岡はこのとき終始表情が笑っていました。俺が西岡だったら、これほど上手に馬締の相手をできるかというと全く自信がありません( ´∀` )。

しかし、そんなラブレター作戦は成功して、晴れて馬締は林香具矢と付き合うことに成功します。

それから月日が経ち……

それからさらに十年以上の歳月がたち、いよいよ新しい中型国語辞典『大渡海』が完成間近に。しかし、そこでもともと高齢だった国語学者の松本朋佑が逝去してしまいます。

幸い、本そのものは完成していたので、本を見せることはできたのですが、書店に並ぶさまはついぞ見ることのできないままお亡くなりに……。

しかし、松本朋佑は思い残すことはないと幸せそうに息を引き取ります。

「玄武書房地獄の神保町合宿」と、各社の辞書編集者の間で語り継がれることになる伝説の作業はこうして幕を下ろします。

読んでいて幸せな気持ちになれる物語

この小説を読んでいて、そして読み終わって思ったのが、読んでよかったなあ……幸せだなあというものでした。

心が温かくなる素敵な小説でした。オススメです。



それとつい最近知ったのですが、舟を編むが2016年10月から放送が開始されるみたいですね。フジ系列の「ノイタミナ」で放送される模様です。フジ系列なら家でも見れるはず!

今から楽しみです!(^O^)

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