蜩(ひぐらし)ノ記 葉室麟
蜩という漢字
本当は蜩にふりがなをつけたくなかったのだが、あまりにもなじみのない漢字だったので、その方が分かりやすいかなあ、と思ってつけました。だって途中の栞挟んだところから読もうと思って本の表紙を見るたびに、「……あれ、これって何て読むんだっけ?」ってなるんですもん。
俺がただ無知なだけだったら、自分のブログで無知を晒しているだけなわけだが……まあいいや。
歴史小説という存在
wikipediaより抜粋豊後、羽根(うね)藩。城内で刃傷騒ぎを起こした檀野庄三郎(だんの しょうざぶろう)は、家老・中根兵右衛門の温情で切腹を免れたものの、僻村にいるとある男の監視を命じられる。その男とは、7年前に藩主の側室との不義密通の罪で10年後の切腹と家譜の編纂を命じられ、向山村に幽閉されている戸田秋谷(とだ しゅうこく)だった。秋谷の切腹の期日まで寝食を共にし、家譜の編纂を手伝いながら秋谷の誠実な人柄を目の当たりにするうちに、庄三郎は秋谷に敬愛の念を抱き、次第に秋谷の無実を確信するようになる。やがて庄三郎は、秋谷が切腹を命じられる原因となった側室襲撃事件の裏に隠された、もう1人の側室の出自に関する重大な疑惑に辿り着く。
読書家を自負しておきながら、歴史小説は今までほとんど読んでなかったという私……。
直木賞受賞作というのは知っていたので、今後の執筆活動の糧になればという思いから読んでみました。
歴史小説だから、過去の偉人を題材にした小説だとばかり思っていたが、
歴史小説というのは主として歴史上に実在した人物を用い、ほぼ史実に即したストーリー、またはその時代を設定して、その中での空想上の物語が書かれたものが展開される小説のことである。とのことだから、こちらは時代設定から独自の物語を書き上げた小説なのだろうか。 檀野庄三郎も戸田秋谷も調べても、この蜩の記関連のことが出てくるばかりで、実在する人物かどうかはわからなかった。
今自分はとても阿保なことを言っているのかもしれない。歴史小説好きの方は呆れているかもしれないが、最後まで付き合っていただけると嬉しい。
源吉という聖人
物語は、主人公である檀野庄三郎が見張り相手の戸田秋谷に惚れ込み、彼の無実を晴らしてやりたいと奔走する物語なのだが、この物語に登場する源吉という人物が非常にいい味を出している。戸田秋谷の息子である戸田郁太郎と仲のいい農家の子供なのだが、妹思いで人としての器が大きいのだ。町で一揆だ何だと不穏な空気が漂う中で、この源吉という子供は「そんなことより働かないと食っていけねえ」とほぼ超然とした態度でいる。
郁太郎も源吉にはいつも感心させられているのが、可愛らしい。
殺人が起きて、源吉の父親が疑われたとき、源吉の父親は普段から酒浸りの碌でもない男だったから誰も擁護しなかったのだが、源吉だけは父親を見捨てずに面倒を見ていた。
いよいよつかまりそうな段階になっても、源吉は父親を村から逃がして、そしてお役人に引っ立てられてしまう。
昔の尋問は、むち打ちなどの拷問ありきで酷いものだった。それでも源吉は自分のことよりも妹を悲しませまいとした行動が泣けた。
いい奴だなあ……源吉は。本当に。こういう人間は報われてほしい。
戸田秋谷の切腹の期限が迫り、物語は佳境へ
昔深い縁のあった「お由の方(およしのかた)」の持ってきた書面から現状打開の糸口を見つける庄三郎。
刃傷騒ぎでひと悶着遭った水上信吾(みずかみ しんご)とも和解し、彼の協力で物語は進展していく。
秘められた陰謀が明らかになるにつれ、庄三郎は戸田秋谷の存命の道に希望を見出していく。戸田秋谷の美しい娘、戸田 薫(とだ かおる)との関係も描かれていき……。
人の一生、成長を描いた良質な物語
物語の鍵である戸田秋谷の罪の陰謀を明かしていく中で、次々に明らかになる事実は読者を驚かせ、楽しませるものだったが、それ以上に素晴らしいのが、人の気概や成長についての描写だったように思う。
いい読書体験だった。
皆さんも気になったら是非!
それでは今回はこの辺で失礼します(o^―^o)ニコ
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